福井大学附属図書館報「かりん」   No.31


 

<目次>

巻頭書

図書に埋もれていた「双頭の鷲」 ………………………… 小平 俊之

図書館委員からの寄稿

子どもの読む本はおもしろい ……………………………… 村野井 均

教育徒然考 …………………………………………………… 瀬尾 利弘

図書館職員の声

電子図書館化に向けて ……………………………………… 塩崎 睦子

遡及入力の推進について …………………………………… 網本 幸代

特集‥‥図書館50年に寄せて

図書館の思い出 ……………………………………………… 高畠 好子

夢茫々 ………………………………………………………… 平泉 浤祥

年表で見る図書館の50年

お知らせ

CD−ROM等データベース利用案内

全国共同利用図書(大型コレクション)及び自然科学系特別図書の案内

1999年電気・通信普及財団寄贈図書一覧表

2000年図書館開架雑誌リスト

図書館この1年

人事異動




       図書に埋もれていた「双頭の鷲」


                                  小 平 俊 之

 学生諸君は図書館や図書室とこれまで色々な関わりを持って来たであろう。そして、何
か思い出を持っている諸君もいるかも知れない。私にも図書館というといつも思い出され
ることがある。
 附属図書館の蔵書には、勉強の助けとなるものや研究の助けになるものなどがある。後
者に属するものとして、3年生までの諸君には馴染みが無いかも知れないが、学術雑誌が
ある。これは世界中の大学や研究機関などの研究者が、研究成果を論文としてまとめ報告
したものを、掲載しているものである。このようにしてこれまでの科学研究の成果は、人
類の遺産として残されてきた。また、これからも残されて行くことになる。我々が新しく
研究を始める時には、その研究分野でこれまでにどのような研究がなされているかを、こ
れらの学術雑誌により調べることが最初の仕事となる。私が図書館というといつも思い出
すのは、この学術雑誌と関係している。そのことと関連して最近思うことを述べてみよう。
 チェコ共和国がチェコスロヴァキア社会主義共和国であった頃、同国の首都プラハに住
んだことがある。チェコスロヴァキア科学アカデミーの高分子化学研究所で1966年か
ら1969年の3年間研究生活を送ったからである。プラハは、旧市街に中世の街並みを
残しており、また、その時以来の時々の建築様式を反映した建物が残る美しい街である。
余談になるが、カフカはこの街の生まれでここで彼の作品を書いた。彼の「審判」には迷
路のように入り組んだプラハ旧市街の雰囲気が色濃く反映されている。高分子化学研究所
は設立されて間もなかったため、学術雑誌はまだ十分に整備されていなかった。そのため、
少し離れた場所にある有機化学関連の研究所の図書室をしばしば利用させてもらった。そ
こには、古い時代からの学術雑誌が良く整理されて開架されていた。科学の進歩は目覚ま
しく、発表してから暫くすると多くの論文の現実的な価値は無くなって行くものである。
したがって、ある程度古い学術雑誌はほとんど開かれることもなく、書架を埋めているだ
けとなる。勿論、今は顧みられることもないこれらの研究成果の上に、現在があることは
言うまでも無いことであるが。目的とする雑誌の論文の調べも終わり、帰ろうとして今世
紀初頭の雑誌が眼に付いた。何気なくそれを手にとり開いてみると、オーストリーハンガ
リー帝国を治めていた、ハプスブルグ家の紋章「双頭の鷲」の刻印が押されていた。その
当時のチェコスロヴァキア領はハプスブルグ家の支配下にあったのである。第一次大戦後
の同帝国の崩壊によりチェコスロヴァキアとして独立した。この第一共和制の時代は、プ
ラハを首都とした頃の神聖ローマ帝国時代とともに、チェコスロヴァキアが最も繁栄した
時代である。しかし、その繁栄もナチスドイツへの宥和政策をとったミュンヘン会談のた
め、ドイツへ併合されることにより終りを告げる。第二次大戦の終結により再び独立した
が、ヤルタ体制の下東欧圏へ組み込まれ、社会主義共和国となっていた。手にした雑誌は、
このようなチェコスロヴァキアの歴史の中を生き残ってきたことを思い、しばしの感慨に
耽った。何故かこのことがいつも図書館との関係で脳裏に浮かんでくる。
 私がプラハに滞在していた頃の同国の社会主義体制は色々な面で齟齬をきたし、その経
済は行き詰まっていたが、1968年にピークを迎える「プラハの春」で、プラハは活気
に満ちた街となっていった。しかし、同年8月20日深夜からのソ連軍を主体としたワル
シャワ条約機構軍の侵攻により、一夜にしてその夢は消えた。それ以後、あのベルリンの
壁の崩壊に続くビロード革命まで、暗い時代をほぼ20年過ごすことになる。その革命後
もさらにチェコとスロヴァキアへの分裂が続き、プラハを中心とする地域はチェコ共和国
となった。後から振り返ってみるとこの歴史の流れを説明することは可能であるが、あの
当時、20年後にこのような大きな変化が起こるとは考えもしなかった。
 大国の狭間で揺さぶられてきたチェコスロヴァキアの運命とはかなり異なるが、日本も
明治維新以後に限っても、大きな変貌を遂げる節目を何回か経験してきた。そして、まさ
にこの現在もそのような大きな変化が起ころうとしている時であると言われている。しか
し、その先行きの変化を見通すことは難しく、人の心を不安にするものである。書物を開
き静かに思索する時間を持つことも必要ではなかろうか。
                       (こだいら・としゆき 附属図書館長)



        子どもの読む本はおもしろい


                                 村 野 井 均

 今どきの学校
 現代の学校では、調べて発表する形の学習が増えている。実際に川の汚れを調査したり、
地元の歴史を調べ、あるいは高齢者や地域の名人たちと交流するのである。遠隔地の学校
と交流する時は、電子メールやビデオレター、テレビ電話を使っている。その結果をポスタ
ーや新聞に書いて発表したり、OHPでプレゼンテーションしている。ホームページを作
って報告をのせたり、ビデオにまとめて校内放送で児童・生徒へ発表したりする学校は多
い。最近は、ケーブルテレビを使って地域の人たちへ発表したり、ゴミの分別を訴えるた
めのチラシを作り、市民へビラ配りしたりと、社会へ働きかける例も出てきた。
 実際にやってみることを重視した学習であり、調べたり、記録したり、まとめる際にい
ろいろなメディアが使われている。カメラも使い、キーボードもたたき、番組作りもする。
時代とともに「読み書き」(リテラシー;Literacy)の内容がずいぶん広がったといえる。

 リテラシーの拡大と基礎基本
 ただ、見た目は変わったかもしれないが、重要な点は何も変わっていない。資料を正し
く読みとり、自分の主張を相手にわかりやすく伝えなければないのである。多くのメディ
アを使ったからといって読みとりは、決して正確にならない。やはり文章の読みとりが基
本なのである。
 その基礎の上に、発表では発表を聞く人の立場に立つことが求められる。自分の立場か
ら考えるのでなく、自分の発表を聞いたり、読んだり、見たりする人の立場を考えなくて
はならないのである。より難しいものが求められているといえる。つまり、自分の発表を
第3者の視点で読むことが求められる学習なのである。したがって、ふだんの生活の中で、
読み手の体験を十分に積んでおくことがますます必要になっている。

 子どもは読書好き
 子どもは読書好きである。くもん子ども研究所(1994)が小学4年生から高校3年生ま
で708名に行った調査によれば「あなたは読書が好きですか」という質問に、77.2%の小
学生が好きと答えている。1年間に読んだ本も多く、小学生は、「20-39冊」と「60冊以
上」が21.1%と同率で1位になっている。 ただ、小学生は明確に読みたい本があると
いうわけではなく、「おもしろそうな内容のもの」70.8%、「すきな分野のもの」46.2%
を選んでいる。小学生の特徴として「おもしろそうな題名のもの」で選ぶ子どもが36.0%
もいる。漠然とした内容で選んだり、題名で選んだりしている。しかし、多くの種類の本
に出会うためには、漠然としていた方がよいといえる。おもしろいそうだからという理由
だけで、多読、乱読し、気に入った本は繰り返し読んでみるべき時期といえる。

 どんな本を読んでいるか
 それでは、子どもはどんな本を読んでいるのだろうか。毎日新聞第40回学校読書調査
(1994)は、全国学校図書館協議会の協力を得て、一万二千人の児童・生徒を対象に調査
した。その中から、子どもの読んだ本ベスト5を表1にあげる。

 表1 最近読んだ本ベスト5
 小4男子               小4女子
学校の怪談 怪奇もの       家なき子
ファーブル昆虫記         赤毛のアンシリーズ
日本の歴史            不思議の国のアリス
ボク、ただいまレンタル中     おばけのはなし
エジソン             学校の怪談
コロンブス            にじ色のガラスびん
                 魔女の宅急便
                  
 小5男子               小5女子
日本の歴史            日本の歴史
江戸川乱歩シリーズ        ヘレン・ケラー
シャーロック・ホームズシリーズ  学校の怪談
怪盗ルパンシリーズ        シートン動物記
学校の怪談            ベートーベン
西遊記              ファーブル昆虫記

 小6男子                小6女子
日本の歴史            日本の歴史
怪盗ルパンシリーズ        赤毛のアンシリーズ
シャーロック・ホームズシリーズ  卑弥呼
江戸川乱歩シリーズ        ヘレン・ケラー
聖徳太子             時の輝き
はだしのゲン           はだしのゲン
(第40回学校読書調査、毎日新聞より)

 これを見ると、小学4年生で怪奇ものがすでに上位に入っている。テレビ番組の影響が
大きいと言える。また、伝記や児童文学には根強い人気がある。なお「日本の歴史」は、
学習マンガで、5年生で1987年から、6年生では1983年からトップが続いており、かたく
るしくない歴史入門書として読まれている。 女子で選ばれている「魔女の宅急便」(角
野栄子)は、文字も細かくなり、一日で読み切れない本である。高学年が好む「ライオン
と魔女」(C.S.ルイス、岩波少年文庫)、「ゲド戦記」(ル・グウィン、岩波書店)、
「空色勾玉」(荻原規子、徳間書店)など長編ファンタジー小説へつながってゆくのであ
ろう。

  好まれる作家
 つぎに、好まれる作者を見よう。くもん子ども研究所(1994)は、子どもの好きな作者
を調査している。小学生がどんな傾向の本を好んでいるかわかるのであげておく(表2)。

表2 あなたの好きな作家,小説家はだれですか
 (3人まで書いてかまいません)
 小学生の部

 1位 那須正幹
 2位 夏目漱石
 3位 寺村輝夫
 4位 江戸川乱歩
       あまんきみこ
    折原みと
 7位 コナンドイル
 8位 鳥山 明
 9位 ミヒャエルエンデ
 10位 宮沢賢治
    小林深雪
   くもん子ども研究所(1994)より

 1位の那須正幹は、「ズッコケ3人組」シリーズ(ポプラ社)で有名である。小学6年
の3人組が主人公の探偵ものであるが、4年生も読んでいる。内容は、宝さがしや時間漂
流など冒険ものから文化祭をあつかった学園ものまで幅が広く、NHK教育で番組化され
たこともあって人気がある。同じ調査のなかでたずねられた小学生の印象に残った本の質
問でも、「ずっこけシリーズ」は、「シャーロックホームズ」シリーズを押さえて1位に
なっている。
 2位の夏目漱石は「坊ちゃん」で有名であり、学園ものの古典といえる。
 3位の寺村輝夫は「ちいさな王さま」シリーズ(理論社)から「かいぞくポケット」、
「わかったさん」「こまったさん」シリーズ(あかね書房)など冒険ものからクッキン
グ・ファンタジーまで書いており、低学年から高学年まで幅広く読まれている。
 つまり、家庭や学校など身近な世界を舞台にした冒険ものや推理小説が好まれているこ
とがわかる。折原みと・小林深雪は、恋愛ものを中心にしたティーンズハート文庫の作家
であり、女子の人気が高い。

 本をすすめる効果
 本を読む子どもが多い一方で、1ヶ月に1冊も本を読まない子は、小学生で14%、中学
生は50%、高校生で63%になった。どうすればいいのだろう。大人は、今どきの子どもは
本を勧めてもどうせ読まないし、煙たがられるだけだと思いがちである。しかし実は、本
の勧めは本を読む大きなきっかけになっている。
 両親や先生に本を勧められたことのある児童、生徒は小学生75%、中学生56%、高校生
で52%である。このうち、薦められた本を読むことが「ある」は小学生88%、中学生73%、
高校生65%と高率なのである。とくに小学生では読書に結びつく割合が高い。本は勧める
べきなのである。
 勧められた本の読後感で「よかったこと」(複数回答)を見ると、小学生は「知らない
ことがわかった」61%、「ますます本が好きになった」46%、「勉強が好きになった」32
%とよい評価をしている。
 一方で、両親や先生に本を勧められたことが「ない」児童はどうだろうか。この子たち
に本を勧めてもらいたいかどうかたずねたところ、勧めてもらいたいいと「思わない」割
合が65%だった。つまり、勧めてもらった経験のない児童は、本を勧めてもらいたくなく
なってしまうのである。親や教師がよい本を紹介し、与える意義が大きいことがわかる。
 活字離れや本を読まない現象に対して手をこまねいているだけではいけない。大人はよ
い本を子どもにもっと薦めるべきなのである。自分が感動した本を子どもに勧めてみるため
には、大人自身が読書の楽しさを失わないことが大切といえる。また、大人自身が子ども
の本に関心を持つことから始まるといえる。
 
【引用文献】
くもん子ども研究所 1994a からざREPORT Vol.19 活字メディア 〜今どきっ子の「読
み方」〜 くもん子ども研究所 

毎日新聞 1994 特集、第40回学校読書調査
毎日新聞 1994.10.27  

                         (むらのい・ひとし 図書館委員)




              教育徒然考


                                  瀬 尾 利 弘

 かりんの原稿依頼を受け、当初は、理系の教官らしく、科学的見方や考え方をテーマに
しようとした。しかし、その後、長谷川真理子氏が、この分野を主題とした、読み易く、
面白い、『科学の目、科学の心』を書かれているのを知った。そこで、この方面に興味の
ある方は、上記の本を参照して頂くことにし、ここでは、昨年後期に担当した一授業を通し
て、徒然に、思ったこと記述したい。
 ご承知のように、本学では、21世紀の大学の将来像を見据えた、学部および学科の改組
を行ってきている。それに伴い、カリキュラムの大幅な変更がなされた。特に、注目され
るのは、教養(共通)教育において、工学部の教官も多数、その教科を受け持つことにな
ったことであろう。
 私の所属する学科でも、化学・材料に関連する数科目が提案され、その1科目を初年度
は、自分が講義することになった。それまでは、主に2年次以上の学生を相手に、特定の
専門科目だけを教えてきたので、開講を前にして、どのように一般教養的講義を進めたら
良いのか、その方策を模索していた。
 学期初めに登録した学生は、1年次45%、2年次以上55%で、その内、化学系学科の学
生は47%であり、教育系学生も10%含まれていた。この内訳を見て、具体的には、次のよ
うなシラバスを作り、それを実行した。すなわち、前半では、化学の発展の歴史と化学と
社会の関わり合いについて、やさしく解説したレジメを中心とした口述講義を行い、後半
では、各自が興味をもつ分野に関して5分程度にまとめて発表してもらうという授業構成
である。また、2年次以上の化学系学生のためには、より専門的な内容を解説したプリン
トも用意して講義を進めた。
 さらに、最近の学生の気質や考えを確かめ、その要望を聞くためのアンケート調査を、毎
回実施することにした。
 まず、授業開始に当たって、”大学で何を学ぶか(学びたいか)?”という質問をした
ところ、次のような回答が大半を占めた。
 ○社会で役立つ専門的知識と技術の修得。
 ○広い視野を身に付け、人間(対人)関係について学ぶ。
 この結果から、極めて、堅実で、的を得た思考をしている学生像が浮かびあがり、私に
とっては、非常に感慨深かった。
 これとは逆に、”学卒の新人に対して、何を期待するか?”を、社会人(受入れ側)に
アンケートした化学系学会誌があったので、それに記載された、50余人からの貴重な本音
を、集約して見たのが以下である。
 ○基礎的な学力や知識は、当然期待されるが、それより重視するのは、自分の視点、
  自分の意見をしっかり持ち、何事にも挑戦する意欲/情熱/夢である。
 ○実務上では、創意工夫(独創性)や問題解決能力、人間性など、基本がきちんと
  できていることが第一である。そのためには、幅広い読書や対人交渉力・協調性
  (友情・恋愛も含む)、旅行などで培われる人生観や世界観を確立することが必
  要である。
  〜学生時代の一般教養、専門以外の知識の取得や学内活動(サークルなど)、さ
  らには研究室での対人関係(教官や同輩・先輩など)や友人・知人との交流・学
  外活動(ボランティア・バイトも含む)をおろそかにしないで欲しい。  
  ○専門にこだわりすぎないことと、いろいろな人の考え方を受け入れて、理解して
   いけるような度量を身につけること。
  本質的には、前述の学生の回答内容とは、大きな隔たりはないと感ずるが、より具体的で、
高い視点からのコメントと言える。
 さらに、社会人が共通して、特に強調しているのは、”課題等を解決するための考え方、
方法を修得すること”と、”豊かな人間性を養うこと”であった。
 このうち前者は、いわゆる知性・知恵に、後者は人格形成にかかわる事柄で、共に、一
朝一夕には(或いは、一生かかっても)、達成できない目標である。
 では、いかにして、これに向かって、アプローチして行けば良いのであろうか!?
 このことに関して、一つのヒントを与えるような幾冊かの本があるので、ご紹介したい。
 まずは、英国物エッセイストとして知られる、りんぼう先生こと、林望氏著の『知性の
磨きかた』である。
 この本では、読者に語りかけるような文章で”本当の知性とは何か?”について、この
ように述べている。「細々とした(受身の)知識を取得するより、直接自分の経験を通し
て、1つの筋道(方法論)を見いだしていくことの方が大切である。それには、自分の足
で歩き、自分の目で見、自分の頭を使って、主体的に物事に関わっていかなければならな
い。ただ、これに向かう努力は、(永平寺の)雲水修行のように容易でなく、体力もあり、
頭が柔軟な若いうちでなければ、(真の)方法を身につけることはできない。」
 これと似通ったことを、近年、世界的にも躍進著しい日本ラグビーの監督である平尾誠
二氏も、その著書『知のスピードが壁を破る』で指摘している。彼は、日本代表チームの強
化のために、まず、強い「個」を作ること、すなわち、”誰から言われて努力するのでな
く、自分で自分を成長させていけるような自発性と自主性を持ったプレイヤーを育てるこ
と”に勢力を注いだ。その実現のために、常に、ゲームや練習の終了後、時には中断させ
て、「どこに問題点があったのか?」「なぜ、パス(キック)したのか?」「今、何を考え
ていた?」などを聞き、選手達自身の中に問題意識を芽生えさせるようにしたという。
 〜この指導法の根底には、「経験を通して考えることで、知識、技術は体得できるのだ」
というゆるぎない信念が垣間見える。 
 さらに、近年、こころの書家・詩人として親しまれている、相田みつを氏(残念ながら、
平成3年永眠されたが)もその作品中で、”体験して はじめて 身につくんだな”
という余韻のある言葉で、表現している。
 このように、実践(実体験)の重要性は認識された訳であるが、一方、様々な知識が得
られ、疑似体験もでき、人格形成にも有効な良い方法としては、”読書”が挙げられる。
 この読書に関し、先の林氏は、ダニエル・ペナックが唱えた、
【読者の権利十カ条】
@ 読まない権利。
A 飛ばし読みする権利。
B 最後まで読まない権利。
C 読み返す権利。
D 手当たり次第何でも読む権利。
E ボヴァリズム(内容に染まり易い権利)。
F どこで読んでも良い権利。
G あちこち拾い読みする権利。
H 声を出して読む権利。
I 黙っている権利。
に沿った、”奔放な読書法”を推奨している。
 つまり、「学生は、古今の名著や古典を読むべきだ」とか、「雑誌、軽い読み物やマン
ガは教養にはならない」といった、押しつけ的で、型にはまった読書は、全く意味がない
し、効果も期待できない。「大事なのは、どんな形でも良いから、自分の好みの本をとに
かく読むことから始めてみること。偶然にも、”本を読む面白さ”を一度でも味わってしま
えば、しめたものである。その結果として、読書を楽しむことが、人生にとって豊かさを
与えることを知ることになる。」 異色の作家、勢古浩爾氏も、『自分を作る
読書術』の中で同様のことを述べている。
 本を読むのに遅すぎるということはなく、年齢制限もない。読み方は自由である。薪の
ように、一冊一冊、自分のために燃やしてゆけばよい。その熱が読む者に伝わること、そ
れだけが本のもつ唯一の使命だからである。
 この本では、”世間を生き抜く”、”弱さを鍛える”、”論理の力をつける”、”覚悟
を決める”、”自分をゆさぶる”ための読書を各章として、自分を再生し、静的に鍛えて
いく実践的読書術が、熱っぽく語られており、章末には、ブックリストも添付されている。
 では、少年・少女期の読書教育は、どうなされるべきであろうか?〜初等・中等教育段
階では、高等教育(大学)の段階とは、当然、事情が異なり、モティベーションや感動を与
える教育が必要と思われる。         
 例えば、人智学者シュタイナーは、「12歳頃までの子供は、多分に絵画的、想像的であ
る。この時期に、ファンタジーの力を働かせると、思春期になって思考力に目覚めた時に、
本当に自ら考える人になる」と説いている。
 彼が創立した学校では、小学1〜3年で、童話・聖人伝・旧約聖書、小学4〜6年で、神
話・古代文化の歴史と物語、中学で、作文・文法・詩・戯曲と、その年齢の子供の心の成
長にふさわしいものが選ばれている。さらに、低学年では、先生が静かに繰り返し語り聞か
せる授業を行い、高学年では、生徒自らが作った脚本を基に、全員が演技者・スタッフと
して上演し、最後の仕上げをするという。
 〜シュタイナー校のような読書・教育法は、”不登校・学級崩壊”などが社会問題化して
いる今日、一考すべき価値があろう!
 講義中、学生にアンケートした、”今までに一番心に残った本”のベスト4は、
@ 僕らの7日間戦争(宗田理)
A 走れメロス(太宰治)
B ブラック・ジャック・火の鳥(手塚治)
C ドラゴンボール(鳥山明)
であった。これを見ても、子供時代に読んだ本の印象が、非常に根強く残っていること、
従って、初中等教育の仕方がいかに大切かが分かる。
 さて、話しが戻るが、”学ぶ”ことについては、「ただ読んだだけでは理解度10%、聞
いただけでは20%、見ただけでは30%、見たり聞いたりの両方で50%、他の人と討論をし
て70%、実際に体験して80%、誰かに教えて95%」ということが言われてる。
 本年度の新入生および在来生にも、このことを頭の片隅に置きながら、各自のスタイル
で、”大いに読書を楽しみ”、”大いに体験を通して学び、かつ遊び”、”大いに人的交
流を深め”て欲しいと思う。〜自分の内(魂)なる欲求から、自覚的に行動できる(生
きる力を備えた)人間への成長を期待したい。
 同時に、私達(教官側)も、学生一人一人の資質を見極め、向上させるような教育・研
究をすべく、努力を重ねる必要があろう。 希望に溢れた学生達との”新たな出逢い”
を、今年も心待ちにしているこの頃である。
                          (せお・としひろ 図書館委員)



           電子図書館化にむけて

          −大学図書館長期研修に参加して−
                                   塩 崎 睦 子

 この研修は平成11年7月12日から7月30日までの3週間で前半の1週間が筑波地区、後半
の2週間が東京地区で行われ、全国から集まった39名の一員として参加することができま
した。
 研修内容は、講義・実習・見学等多岐にわたってありましたが、1班「大学図書館のコ
レクション形成の在り方と資源共用・保存について」 2班「電子図書館時代の図書館の
組織・機構の在り方について」 3班「電子図書館サービスの在り方と利用者教育への取
り組みについて] 4班「図書館サービスの変革と地域および他機関との連携について」
と班別に分けられ、私にとっては、いちばん苦手な内容の2班に属しました。
 班別ごとのグループ討議が講義・実習の間々にあり一日の研修終了後もそのまま残って
討論することもしばしばあり、日々の業務に追われ、また、現在の図書館の進歩について
いくには、なかなかしんどいという悩みやあせりがありましたが、受講生の皆さんの熱心
なやる気を感じパワーをもらう3週間でした。
 この研修での講義や電子システムを進めている大学図書館や最新設備の整った企業の見
学等で大学図書館は、情報化社会に向けて電子図書館的機能を備えるために、大きく変貌
しつつあることを改めて実感しました。
 今や図書館がただ単に図書を貸し出ししたり、場所を提供するだけでなく、電子図書館
的機能の充実・強化が求められています。電子図書館とは、電子化された学術情報を利用
者に提供発信する場であり、貴重資料の電子化、電子ジャーナル・CD−ROMなどの電
子資料の提供を「どこでも、いつでも、だれでも」利用者が図書館に直接出向くことなく
インターネットを通して24時間利用できる電子図書館への期待は、大きいものがあると
思います。
 大学附属図書館に採用されて始めての仕事が、目録カードを作成することで、手書きの
ガリ版刷りで、手や洋服を黒く汚しては、カードが乾いたら、書名順・著者名順に組み込
みするという作業をしてきた私には、隔世の感があります。
  従来の業務に加え、電子図書館への構築を進めるには、いろいろな問題が山積していま
すが、雑誌情報係として雑誌の遡及入力を進め、OPACの更なる充実をめざして、努力
していきたいと思います。
 最後に長期間の研修に参加させていただいた図書館員の皆様に深く感謝いたします。
                         (しおざき・むつこ 雑誌情報係)



         遡及入力の推進について


                                   網 本 幸 代

 情報と技術の急速な進歩・普及により図書館を取り巻く環境も刻々と変化し、求められ
るサービスも広範囲になってきています。さまざまな要求に対し的確に情報提供をするた
めには、資料の収集および保存・蓄積を継続的に行うことが必要です。
 附属図書館では、書庫にあるデータベース化されていない図書の目録所蔵情報(書名・
著者名・出版社などetc…)を入力しています(遡及入力といいます)。平成9年4月か
ら入力をはじめ、平成12年1月現在で、ようやく30,000冊の所蔵データを入力することが
できました。
 遡及入力の完了したデータはOPAC(オンラインによる目録検索システム)の検索結
果にも表示されます。さらに、全国の大学図書館とオンラインでつながっているので、学
内だけでなく、他大学との文献複写・相互貸借といった共同利用にも役立ちます。このよ
うに目録所蔵情報は、所蔵資料の電子化のための基礎となるものであり、その遡及入力は
さらに促進される必要があります。
 また、平成12年4月から福井県内5大学(福井大学・福井医科大学・福井県立大学・
仁愛女子短期大学・敦賀短期大学)の単位互換制度の実施が開始されます。(この制度は、
在学中に他の大学の授業科目を履修することにより、所属大学の単位として認定される制
度です。)これに伴い、対象となる特別聴講学生が図書館施設を利用することも可能とな
りますので、さらに幅広いサービスが要求されると思われます。
 図書館の社会的使命の一つとして、資料の保存と次代への伝承があります。それは人々
が求める資料や情報を提供するだけでなく、私たちの先祖が何代にもわたって蓄積してき
た知的文化財を収集・保存して確実に次代に受けついでいくことです。
 書庫で眠ってた図書が、一人でも多くの人の手に届き、学習・研究活動の資料となるよ
う、ほこりやカビの襲撃(?)と戦いながら、遡及入力の推進をはかっていきたいと思いま
す。
                          あみもと・ゆきよ 図書情報係)





             図書館の思い出


                                  高 畠 好 子

 戦後まだ日も浅い昭和23年3月、福井師範学校男子部の図書館に勤めさせていただく
ことになりましたが、当時は今の様に物がなく着ていく洋服もなかったので、きもので通
勤をしておりました。
 図書館は旧兵舎の中で最も立派な将校集会所でしたが、中は板張りのため、殆どの学生
は下駄履きで、草履に履きかえるように注意してもなかなか聞いてくれず困ったものでし
た。
 当時の館長の話では、講義の時、レインコートを着た学生がおったので脱ぐように云わ
れたところ、これ一枚しか着ていませんと答えたそうです。現在では考えられない時代で
した。
 師範学校の時と思いますが、進駐軍が来たので閲覧禁止の図書が処分されているかどう
か見に来たのではと、こわごわしていたのですが、書庫を見て帰っていったようなことも
ありました。
 昭和23年6月28日の福井大地震では、福井師範のある神明町には、被害はなかった
のですが、国立病院に負傷された方を次々と、進駐軍がジープで運んで来ます。誰がどう頼
みこんだのか帰りのジープに乗せてもらって、焼野が原になった市内を見ながら、県庁まで
行ったのを覚えております。
 福井師範学校男子部登録番号No1は『漱石全集』第一巻で緊張しながら押した記憶があ
ります。
 会計検査でもあったのでしょうか、『四部叢刊』の押印を明日までにやるようにとのこ
とで、男の方は泊り込みで仕事をされたことも思い出されます。
 昭和27年7月から2ヶ月間、京都大学で司書講習を受けにいったのも遠い懐かしい思
い出の一齣になっております。京都御所の拝観や太秦の映画撮影所の見学もありました。
 その年の秋、本館に移転しました。通勤時間が倍になり、身動き出来ないくらいの満員
電車で慣れるまで大変でした。本館に全員が揃い賑やかになりました。
 昭和28年3月には、閲覧室や事務室も出来て新しい気分で仕事に励みました。
 現在のように情報化が進んでいない時でしたから、毎月金沢のアメリカ文化センターに
先生方の希望される図書を借りに行きました。リュックに返却本を入れ、帰りには貸出図書
を背負って交替で行っておりました。
 昭和28年6月から、それまで手書きで2枚の目録カードに、著者、書名、件名が増え、
ガリ版で原紙に書き印刷する様になりました。
また、毎月整理した図書を謄写印刷し、各学科にお渡ししておりました。
 昭和28年9月の水害では、図書が水浸しになり、工学部から乾燥器を借りてきて、一
冊づつ乾燥させるのですが、強すぎると焦げるので注意してやっておりました。後始末に
は、何日もかかった様に思います。ある朝、閲覧台で新聞を読んでいたら、足の甲が冷た
いので見たら、小さな蛇が乗っていて悲鳴をあげました。水と一緒に入ってきたのでしょ
う。
 昭和38年の豪雪は、1月の始めから降りだし、月末まで毎日毎日降り続き、福鉄電車
はストップし、JRだけが辛うじて何本か動いていましたが、来たのに乗らなければと新
聞の貨車に乗り込んだこともありました。電車が動くようになっても市内には入れず、福
井新から大学まで1ヶ月ほど歩きました。少し若かったのかと思っております。
 つながりのないことを思い出すまま書き連ねました。大勢の方とお会いでき、お世話に
なりましたことを懐かしく思い出しております。
                       (たかばたけ・よしこ 元図書館職員)




               夢茫々


                                  平 泉 浤 祥

  校正おそるべし
  児童文学者の山中恒が、『間違いだらけの少年H』のなかで、著書の誤記や誤植や事実
誤認にふれて、「たしかに細心の注意をはらってもミスが出る。なにしろ誤植や誤記の
ない本は奇跡といっていい≠ニいわれるくらいのもので私たちは、奇跡に向かって限り無
く努力する以外にないのである。」と述べ、さらに「澤地久枝さんは新刊書で1か所、人
名の誤記をしたことがあった。けれども、すぐに全部を回収し詫び状とともに改訂版が送
られてきた。」といって、著作物を世にだすことの厳しさを教えられたとあるのだが、私
はここで最近黄泉の客となった名誉教授の杉原丈夫先生を思い出すのである。
  杉原先生は論理学を講ぜられていたが、柳田国男先生の流をくむ民俗学の方で名声をは
せておられた。先生は昭和51年3月定年の故をもって、退官されたが、そのとき図書館
に寄贈された一群の資料がある。それは、先生が松原信之氏とともに、昭和46年から4
8年にかけて編集出版せられた『越前若狭地誌叢書』上・下(松見文庫刊)に収録された
地誌類の底本あるいは校合に用いられたテキスト類のコピ−をすべて寄贈せられたのであ
る。(『越前若狭地誌叢書』は、昭和52年にその続巻を出版したので、都合三巻構成と
なる。)
  たとえば、『若耶郡談』という地誌書がある。これらのテキストの所在は、静嘉堂文庫、
慶応大学、東京大学、徳島県立図書館、大阪府立図書館、宮内庁、小浜市立図書館、福井
大学の8か所であり、小浜市立図書館には2種類の系統の違う本があるので、9種類とな
る。『越前若狭地誌叢書』の校正が杜撰というのではない。どんなに校正に意をはらって
も、起こりうるのが校正ミスだとするなら、それを確認できうる方策が身近にあるという
ことは、極めて有用なことなのである。一般の文章の場合、てにをはが多少違っても読者
は判読が可能であるが、史・資料のばあいは、読者の恣意による判読はゆるされないのであ
る。したがって、いま『越前若狭地誌叢書』を使用するにあたって、文字の使用において、
意味不明が生じたときに、それがもともとテキスト上のミスか、あるいは校正ミスかを判
断するには、『若耶郡談』であれば、東京に行って4か所、徳島に行き、小浜に行きして
確かめねばならない。それは容易のことではない。これが、福井大学の図書館ですべて確
認作業ができるのであるから、その恩恵じつに深いといわねばならない。学者の通弊とい
うわけではないが、こういった資料はなかなか寄贈とはならないのが現実のなかで、杉原
先生のこの行為にいたく感心したものである。(このとき先生は62点ほどを寄贈せられ、
図書館では製本して保存している。)
  先生はこのあと、昭和55年に『新訂越前国名蹟考』を出版された。出版の際、将来誤
植等があったときに正誤表を作成し、3年後に配りたいから購入者はかならず氏名明記の
うえ、著者までポストカ−ドにして連絡をといわれた。そうして、その約束通り、昭和5
8年の暮にその「訂正表」をだされた。先生の山川登美子や橘曙覧や橋本左内などに関す
る評伝については、いささか異論もあり、首肯できないことが多いが、こと地誌の発行に
ついては、その功績大であり、名蹟考については校正ミスが予想以上に多かったといわれ
たが、そのミスの多寡よりもこの3年後云々といって、実際に正誤表を配布されたことが
尊く思われてならない。

  道元文庫のこと
  福井大学の図書館を辞して12年になるが、昨年のことである。鎌倉市在住の團野弘之先
生から『正法眼蔵写本の書誌学的研究』の恵与を得た。團野先生はかつて昭和45年ごろ
大学図書館におみえになり、大久保道舟先生所蔵本の寄贈にかかる「道元文庫」の閲覧を
のぞまれた。大久保先生は、筑摩書房から昭和44年から45年にかけて『道元禅師全集』
を刊行されたが、この全集の校合に使用された各地の古刹にのこる、古写本のマイクロフ
イルム写真の薄焼版を全部寄贈せられたのである。前の杉原先生の行為の先蹤をなすもの
である。ダンボ−ル数箱の内容をもつそれの整理は、机上での整理がおぼつかなく、2日
間の年休をいただき、我が家の畳の上にならべて、前後の錯誤をなからしめんとした。和
装本仕様の製本としたのであるが、後日管理係のかたから、この労をねぎらわれ毛筆3本
ほどをいただいた。
  團野先生は、大久保先生とおなじくその宗門に在籍せられるが、正法眼蔵の写本の調査
は実に50年余にわたっている。調査のために拝覧の願いをだして、30年後にようやく
その許可を得たものもあるという。なかにはいまだに許可を得られないものもあると聞く
が、85歳になってその調査を1冊にまとめられたのである。1冊といっても、A4版上
下2段組の1302頁であるから、なみのものではない。この1冊を閲(けみ)するとき、
我が家の畳のうえに繰り広げた眼蔵のマイクロ版を思いだし、その結実を30年後、この
ように見ることのできたのは、図書館職員の冥利としてよろこぶのである。

  清水英夫先生
  福井大学の、とりわけて建築学の先生には道元禅師の正法眼蔵の愛読者がすくなくない。
故人とはなったが、五十嵐直雄元学長や、すでに大学は去ったが、バロック建築の研究で
知られる渡部貞清元図書館長等は、正法眼蔵の哲理をみずからの建築理論の根底におかれ
ていたふしがある。五十嵐先生はこの「かりん」の第6号のなかで、道元文庫についての
注文もだしておられる。そして、道元禅師に最も忠実にまた大胆にこれの分析をおこない、
道元の心胸にせまろうとしておられるのは、清水英夫先生である。先生は教育学部で哲学
を講ぜられていたが、あの学園が紛争にまきこまれたころ、学長代行として苦慮せられた。
先生は官を辞されたのち、昭和55年に1冊の本を出版された。『私の遍歴のなかの道元
像』である。それは、戦後の世情混沌としているときに、参禅会を組織しておられたこと
から、仲間うちにたいする友情の形見として、ペンをとられたものであるが、その発行部数
は、20部であった。私は、この出版を知り、この発行部数を伺って、先生のこの本に対す
る思いの深さを考えると、無心は失礼だとしながらも、あえて福井大学の道元文庫にたい
して、ぜひ寄贈をお願いしたいと懇願した。たまたま懇意の印刷屋さんから、この情報を
得たのであるが、図書館の職員としては、できるだけ印刷屋さんとは、懇意にするという
か、こういった出版の情報源として、十分認識しておく必要性を痛感したことである。
  この『私の遍歴のなかの道元像』を、教育学部の哲学担当の水田英美先生に話したとこ
ろ、直接これを読まれ、大層感激せられ、道元にたいして「哲学的なロゴスを介しての人
格的交流を持つことが可能であることを学ぶことができる」とされた。清水先生は、ぜひ
図書館にも1冊という私の主張をお聞き届けくださったが、私にも1冊ご恵与くださり、
今にかわらないのをうれしく思うのである。清水先生は、この後毎年のように、つぎつぎ
と上梓され、『道元に関する小論二篇』が「其の一」から「其の五」まで5冊をだされ
たほか、ほかに「折々の感銘を時の流れにまかせるのは忍びがたい」として、
『「永光寺本十二巻正法眼蔵」覚書』、『或る写本とお出会い』、『入越直後における道
元の思想について』、『道元の坐禅論について』、『「永平広録」・「法語」に学ぶ』、
『「永平広録」・「小参」に学ぶ』などを上梓された。近年では、平成7年に『道元の晩
年』を上梓された。先生は、昭和61年ごろからは、福井を去り、神戸ですごしておられ
るが、この『道元の晩年』のなかで、道元が入越下向したその年の示衆、『眼蔵梅花』の
識語『深雪参尺、大地漫々』の一句を極めて印象的ととらえておられる。私もまた最近、
このことから『雪漫々』と題して雑文を記したが、清水先生のお姿がなつかしい。

  図書館とY2K
  昨年は、コンピュ−タの2000年問題がかしましかった。年明けて、大きな問題がな
かったことは喜ぶべきことであり、一部の週刊誌があんなに騒いでいたのになんにも無か
ったではないか、騒いだ犯人はだれだ、混乱がおこるとしたために余計な消費を強いられ
た、この責任者はだれだなどと言い立てていた。平成11年11月12日づけの中日新聞
は、そのコラム「中日春秋」のなかで、「西暦二〇〇〇年まで五十日をきった」といって、
混乱にたいする注意呼びかけを記して「東京ディズニ−ランドでは、大みそかの来園者に
懐中電灯を配るそうだ。」といい、つづけて「それにしても浅はかな、と舌打ちしたくな
る。日付を西暦の下二ケタで管理したのがことの発端。二〇〇〇年になった時の混乱を予
想しなかったのか。怠慢のつけはあまりに高い。」といっている。
  「それにしても浅はかな」という舌打ちの音が聞こえそうな書きぶりであるが、これは
いただけない。今日のコンピュ−タ技術を前提にしての舌打ちは感心しない。
  福井大学の図書館の電算化は昭和50年4月からの稼動であるが、最も図書館システム
の初期に位置するものであり、今日の数多くの図書館システムすべての基本をなしたもの
であり、その後発展していった学術情報システムなどの発想を可能ならしめたものとして、
高く評価されるべきものであった。全国の国立大学の4例目の福井大学の図書館システム
は、その当時前例のシステムのソフトプログラムがアセンブリ言語であるのにたいし、は
じめてコボル語でもってそれを可能にしたことは、画期的なものであったのである。
  もろもろの経費をいれて、約2900万円の予算措置である。しかも、それだけの巨額
を投じながら、システムの構成は、メインのメモリが16KBであった。16MBではな
い、KBの単位なのだ(翌年増設して24KB).内臓ドラムがあって、それは136K
Bの容量,カ−トリッジディスクは2.45MBX3台であった。このディスクの大きさ
は、16ミリ映画のフイルム盤よりも大きなものであった。この当時日本語処理はほとん
ど不可能であった。億単位の所要費がかり、しかもすべてコ−ドに変換して入力というや
っかいきわまりないものであった。したがって福井大学のそれは、紙デ−タベ−スであり、
帳票はすべてカタカナ書きあるいは英文書きであった。
  このようななかでの開発は、連日深夜に及ぶものであり、いや深夜どころか明け方に及
んだものであった。寝袋を用意したが、その中に入って就寝するのも時間が惜しいとする
ものであった。この当時、このようなシステムの開発が可能なものは、30歳まで、これ
を過ぎたら身体がいうことをきかないから、リタイヤだといわれていた。デ−タを削るの
みならず、皆わが身の骨身も削りながらの開発であったのだ。図書館だけではない、すべ
ての分野において、そうだったのだ。けっして浅はかなものではなかったし、怠慢ではな
かった。この当時の仲間、みなちりぢりになったが機会あらばいま一度邂逅してみたいも
のである。
  思うこと多いが、すべて夢茫々である。
             (ひらいずみ・ひろよし 勝山市立図書館長 元図書館職員)
                        (昭和43年12月〜平成元年3月 在籍)



       CD-ROM等データベース利用案内

★雑誌記事索引CD-ROMの検索範囲が広がりました。
 今まで、”1985年から最新版まで”しか検索できませんでした。
 今回、新たに”1975年〜1984年版”を購入しましたので、大いに利用してください。

 雑誌記事索引CD-ROMとは、
・国内刊行雑誌(欧文雑誌を含む)を対象とした国立国会図書館が編集する「雑誌記事索
  引」のCD-ROM版です。
・収録分野   人文・社会,科学・技術の全分野
・収録範囲	1975.1-
・データ更新	最新版---年6回 

・このCD-ROMは図書館での利用となっています。利用されるときは、図書館までお越しく
 ださい。
 なお、4月からは近10年分のデータをネットワークで利用していただけるよう計画中です。
・1975年版より前の記事検索については、2階閲覧室の冊子体をご利用ください。

★科学技術文献速報がCD-ROM版のみとなりました。
 2000(平成12)年度から、冊子体+年間版CD-ROMから年4回〜12回更新のCD-ROM版に媒体
 を切り替えて、より迅速に、より簡単に検索が可能となります。

 科学技術文献速報CD-ROMとは、
・科学技術振興事業団 科学技術情報事業本部(JICST)が発行する「科学技術文献速報」
 全11編をCD-ROM化したものです。 
・収録分野  化学・化学工業編(国内/外国編)、機械工学編、電気工学編、
       金属工学・鉱山工学・地球科学編、土木・建築工学編、物理・応用物理編
       管理・システム技術編、環境公害編、ライフサイエンス編、
       エネルギー・原子力工学編
・このCD-ROMも図書館での利用となりますので、カウンターにお申し込み下さい。

★ERICのWeb版案内
 ERIC(教育学関連文献データベース)は下記のURLにより、無料で利用が可能ですので、
 従来のCD-ROMデータベースによるサービスは中止させていただきます。
  ⇒ http://ericir.syr.edu/Eric/

★その他
 利用方法の詳細については、附属図書館情報サービス係(内線2276〜2278)または
 電子メール(library@karin00.flib.u-fukui.ac.jp)までお問い合せください。


全国共同利用図書(大型コレクション)及び自然科学系特別図書の案内

 下記大学から、全国共同利用図書(大型コレクション)及び自然科学系特別図書の利用案内
 がありましたので、お知らせします。
 なお、資料の利用等につきましては、情報サービス係(内線2276,2277)までお問
 い合わせください。
                                    
    <大学名>	      <資      料      名>
    
  上越教育大学           ペスタロッチ・コレクション

 東京外国語大学         朝鮮近代民族・文化運動資料コレクション

 東京大学               イタリアルネサンスの文芸原典コレクション

 京都大学               16-19世紀フランス都市史資料・建築史・技術史洋書
             コレクション

 九州大学               ドイツ歴史学派と政治経済学コレクション

  北見工業大学           Handbook of Ternary Alloy Phase Diagrams. 
                         10 Volumes. Set
             (三元合金状態図集ハンドブック 全10巻)

  神戸大学               Beilstein Handbook of Organic Chemistry, Supplementary
                         Series V(バイルシュタイン有機化合物ハンドブック)


         2000年 図書館開架雑誌リスト

★洋雑誌★
Analyst
Analytical Chemistry
CA on CD
Current Contents (CD-ROM版)
  Agriculture, Biology & Environmental Sciences
  Clinical Medicine
  Engineering, Computing & Technology
  Life Sciences
  Physical, Chemical & Earth Sciences
  Social & Behavioral Sciences
Current Contents (冊子体)
  Art & Humanities
International Herald Tribune
Life
National Geographic
Nature
Progress of Theoretical Physics
Science
Time

★和雑誌★
Aera
bit
Computer Today
English Journal
ESP
Estrela
Internet Magazine
Library and Information Science
News Week日本版
Newton
UNIX Magazine
URALA/月刊
アサヒカメラ
医学図書館
遺伝
英語教育
映像情報メディア学会誌
栄養学雑誌
エコノミスト
エレクトロニクス
応用物理
オペレーションズリサーチ
音楽の友
化学
科学
科学技術文献サービス
科学技術文献速報 (CD-ROM版)
  化学,化学工業  外国編
  化学,化学工業  国内編 
  管理・システム技術編  
  機械工学編 
  金属工学,鉱山工学,地球科学編 
  電気工学編 
  土木建築工学編 
  物理,応用物理編 
 エネルギー・原子力工学編
  ライフサイエンス編 
 環境公害編 
科学新聞
化学と薬学の教室
学術月報
学校体育
学校図書館
家庭科教育
環境と公害
機械の研究
技術教室
基礎ドイツ語
教育
教育科学 社会科教育
教育科学 数学教育
教育と情報
教職課程
金属
暮らしの手帖
群像
経済セミナー
芸術新潮
現代化学
現代のエスプリ
現代の図書館
建築文化
工業材料
国語国文
国語と国文学
国文学
国文学  解釈と鑑賞
国立国会図書館月報
古文書研究
コンピュータ&ネットワークLAN
雑誌記事索引(CD-ROM版)
百日紅(さるすべり)
史学雑誌
思想
実践障害児教育
児童心理
社会教育/月刊
若越俳史
若越郷土研究
自由
就職ジャーナル
授業研究
ジュリスト
ジュリスト/別冊
情報管理
情報の科学と技術
書学書道史研究
食の科学
女子教育もんだい/季刊
書写書道教育研究
初等教育資料
史林
新潮
数学セミナー
数理科学
スキージャーナル/月刊
生物科学
正論
世界
繊維機械学会誌
専門図書館
川柳ばんば
総合ジャーナリズム研究
体育の科学
大学図書館研究
ダ・カーポ
旅
地学雑誌
地質ニュース
中央公論
中国語
中等教育資料
地理
地理学評論
テアトロ
哲学研究
テニスマガジン
統計福井/季刊
図書館界
図書館雑誌
National Geographic 日本語版
日経コンピュータ
日経サイエンス
日経Linux
日経Windows2000(旧:日経Windows-NT)
日本海作家
日本教育新聞
日本原子力学会誌
日本語
日本語ジャーナル
日本思想史/季刊
日本図書館情報学会誌(旧:図書館学会年報)
日本物理学会誌
農業および園芸
バイオサイエンスとインダストリー
発達
柊(ひいらぎ)
美術手帖
福井県気象月報
福井の科学者
福井の文化
文学
文学界
文藝春秋
法学教室
山と渓谷
山と渓谷/別冊
ゆきのした
ユリイカ
理科教室
理系への数学
理想
留学交流
留学ジャーナル
留学生新聞


             図書館この一年

<附属図書館委員会>
11.5.19 協議事項
    (1)平成10年度図書購入費執行状況について
    (2)平成11年度自然科学系図書資料収書計画調書について
    (3)平成11年度図書資料(大型コレクション)収書計画調書について
11.7.14 協議事項
    (1)平成11年度図書購入費予算配分書(案)について
    (2)平成11年度共同利用資料推薦一覧について
    (3)平成12年度以降CD-ROMデータベース提供計画(案)について
12.1.27 協議事項
    (1)附属図書館開架用継続購読雑誌の一部見直しについて
    (2)JIS{管理システム(Q)}の新規購入について 

<五十年史編集委員会>
11.9.24 協議事項
     福井大学50周年記念誌写真と年表について
12.1.20 協議事項
     これまでの活動の総括について

<館   内>
11.4.8     新入生に対する図書館利用オリエンテーション
11.4.9-15  大学入門セミナー(図書館部門担当) 
11.11.18-19 北信越地区国立大学附属図書館事務(部・課)長会議
       (於:福井厚生年金会館)
 
<館   外>
11.4.21-23  第50回北信越地区国立大学図書館協議会
      (於:長岡市  大畑館長・山岸事務長出席)
11.5.25-26 国立大学附属図書館事務部課長会議
      (於:東京医科歯科大学  山岸事務長出席)
11.6.2   福井県図書館協会理事会・総会
      (於:福井県立図書館  木村情報サービス係長出席)  
11.6.22-25 第46回国立大学図書館協議会総会
      (於:仙台市  大畑館長・山岸事務長出席)
11.6.24   福井地区大学図書館協議会定例会議
      (於:敦賀短期大学  永田総務・田中図書情報係長出席)
11.7.5-8  目録システム地域講習会(図書コース)
      (於:京都大学  網本図書情報係員出席)
11.7.5-9  情報ネットワーク担当職員研修
       (於:学術情報センター  西野電子情報係長出席)
11.7.11-30 大学図書館職員長期研修
      (於:図書館情報大学外  塩崎雑誌情報係長出席)
11.7.22   新CAT/ILLシステム説明会
      (於:京都大学  田中図書情報係長出席)
11.7.30   福井地区大学図書館協議会夏季研修会
       (於:福井市美術館  永田総務係長外5名出席)
11.8.30-31 北陸地区国立大学附属図書館会計担当者会議
       (於:富山大学  永田総務係長出席)
11.9.1-3  ILLシステム地域講習会
       (於:京都大学  藤田情報サービス係員出席)
11.9.27-   漢籍担当職員講習会
     10.1  (於:京都大学   田中図書情報係長出席)
11.10.15  学術情報センターシンポジウム
       (於:京都市  西野電子情報係長出席)
11.10.21-22 北信越地区国立大学図書館研修会
      (於:富山大学  網本図書情報係長出席)
11.11.9-12 大学図書館職員講習会
      (於:大阪大学  網本図書情報係員出席)
11.11.12  NACSIS−IR地域講習会
      (於:金沢大学  木村情報サービス係長出席)
11.12.14  福井県図書館関係職員研修会
      (於:福井県立図書館  西野電子情報係長、岩田図書情報係員出席)


                  人事異動

  氏     名    異動前     異動後      発令年月日
 小 木 信 正   事務長     退 職       11. 3.31
  塚 崎 卓 美   管理係長    施設課企画係長   11. 4. 1
  佐々木 忠 文   管理係     入試課入学試験係  11. 4. 1
 山 岸 照 男   福井医科大学  事務長       11. 4. 1
                      医事課課長補佐 
 永 田 育 男   学術情報係長  総務係長      11. 4. 1 
 佐々木 和 美   学術情報係   総務係                〃
 竹 内 和 生     〃      〃         〃   
 山 口 生 美   参考係      〃         〃         
 矢 野 千鶴子   管理係      〃         〃
 田 中 美智子   整理係長    図書情報係長     〃
 網 本 幸 代   整理係     図書情報係      〃
 岩 田 洋 子    〃        〃        〃
 塩 崎 睦 子   附属学校    雑誌情報係長     〃
           第二係長         
 小 林 恵 子   学術情報係   雑誌情報係      〃
 木 村 幹 明   運用係長    情報サービス係長     〃
 柳 下 裕 美   参考係     情報サービス係      〃
 藤 田 睦 子   運用係       〃        〃
 下 川 美 保    〃        〃        〃
 平 沢 優 子   整理係       〃        〃
 鷲 田 陽 子   運用係       〃        〃
 佐 藤 与 子    〃        〃        〃 
 下 川   勇    〃        〃        〃
 西 野 正 敏   参考係長    電子情報係長     〃
  鷲 田 陽 子   情報サービス係   退 職      11. 6. 5
  廣 瀬 廣 嗣           情報サービス係    11. 6. 7
  佐 藤   篤             〃                〃
 川 端 美紀子           図書情報係    11. 7.12
  藤 井 尚 子             〃        〃
  宇 賀 亜矢子           情報サービス係    11. 8. 2
        〃      情報サービス係   退 職      11.12.28