靈巖夜話

霊巌夜話 れいがんやわ
江戸時代中期の随筆。『霊岩夜話』とも記す。大道寺重祐(知足軒友山)著。十巻二冊。享保十二年(一七二七)完成。問答の形式で、江戸城の開設、徳川氏や大名などの逸話、寺社の縁起、江戸市中の風俗の変遷などを叙述している。慶長―寛永期の記録が多いが、慶安の由井正雪の乱(慶安事件)や明暦の江戸大火、寛文の江戸図成立の経緯にも及んでいる。寺社に関しては、増上寺・浅草寺・不忍池弁天・寛永寺などが取り上げられている。風俗としては風呂屋・煙草・踊り子などに言及している。この記録は友山が八十九歳のときに完成したと巻末にあるが、『岩淵(いわぶち)夜話』とともに、自身の見聞や伝承を書きとめたものである。兵学者としての関心からか、武家関係の記事も多く、江戸時代初期の幕府の機構や、江戸城をはじめとする市中の状況を知るに便利な書である。国立国会図書館・内閣文庫などに写本があるが、活字化されていない。→大道寺友山(だいどうじゆうざん)
(吉原 健一郎)
(JapanKnowledge Lib 国史大辞典(Yoshikawa kobunkan Inc.)による。)