論文投稿や論文利用の際には、ハゲタカジャーナル(Predatory OA)に注意が必要です。
ハゲタカジャーナルとは、「APC(オープンアクセスジャーナルへの論文投稿料)を徴収するオープンアクセス査読誌を装いつつ,実態は査読をせずにAPC収入だけを目的とする雑誌」*1といった粗悪学術誌を指します。
また、それらを出版するハゲタカ出版社とは、「出版の必要に迫られている著者に付け込んで搾取する出版社」であり、論文のアクセプト基準や学術出版における最良の実践を遵守しない、誤った情報や誤解を招く情報を掲載する、健全な編集・出版倫理から逸脱している、透明性の欠如、強引な募集手法などが特徴と言われています。
これらに投稿してしまうと、法外な掲載料を請求されたり、論文を人質にとられたり、研究の信頼性が毀損されるおそれがあります。
さらに、信頼できるデータベースに掲載されないため、他の研究者から引用されることがなくなり、研究者の所属機関と国の研究力が低下し、将来の資金提供が失われる可能性があります。*2
このほか、ハゲタカ出版社が正式な出版社を買収し雑誌名称は変えずに運営していたり、タイトル名を少しだけ変更してジャーナルを乗っ取ったり、まるごと真似て海賊版を作成したりなどの事例が発見されています。
このようなリスクに対して、研究者ご自身で常に意識していただき、以下のサイトのチェック項目を参考に投稿先や引用文献の選定をされるようお願いします。
- 編集責任者や編集委員が明記されているか?
- 編集責任者や編集者はその分野で実績のある研究者であるか?
- 査読方法が明記されているか?
- 査読期間は十分に確保されているか?
- Web of Science(収録雑誌), SCOPUS(収録雑誌), DOAJなどの採録に審査があるデータベースに収録されているか?
- COPE :Committee on Publication Ethics / 出版規範委員会(会員リスト)や OASPA :Open Access Scholarly Publishers Association / オープンアクセス学術出版協会(会員リスト)などの出版団体に所属しているか?
- ISSN ポータルにおいてそのジャーナルに関する情報と照合できるか?
- 論文投稿料がいくらなのか、そしていつ請求されるかが明記されているか?
- 雑誌の目的、対象分野やテーマが明記されているか?
- 雑誌の対象分野や収録されている論文の分野が広すぎないか?
- 同僚や該当分野の研究者はその雑誌について知っているか?
- その雑誌に掲載されている論文の質は高いか?
- ウェブサイトや電子メールに住所が記載されているか、またその住所は実在するか?
- 雑誌の名称やロゴが既存の雑誌と酷似していないか?
- 雑誌の問い合わせ、編集者などが使用している電子メールはその雑誌や所属機関のアドレスになっているか?
※ 広島大学ライティングセンター「オープンアクセスジャーナルに論文を投稿する際の注意事項」を一部改変して転載。
参考情報
チェックサイト
Think. Check.Submit(TCS) 信用できるジャーナルを選ぶためのチェックリスト(日本語版)
Think. Check.Submit(TCS) (English ver.)
主要データベース収録雑誌リスト
Web of Scienceマスタージャーナルリスト
MEDLINE Journal List
参考リンク
島根大学研究推進室「粗悪学術誌への投稿リスクについて(注意喚起)」
北海道大学附属図書館「注意が必要な「怪しいジャーナル」」
広島大学ライティングセンター「オープンアクセスジャーナルに論文を投稿する際の注意事項」
滋賀医科大学附属図書館「論文投稿に関する注意喚起(ハゲタカジャーナルについて)」
参考文献
*1佐藤 翔, ハゲタカOA論文の4割は一度は引用されている, 情報の科学と技術, 2019, 69 巻, 4 号, p. 171-172
*2Serhat Kurt, Why do authors publish in predatory journals?, Learned Publishing, 2018, 31(2), p.141-147
2022.3.16(水)附属図書館学術講演会「オープンアクセス時代の論文投稿とハゲタカジャーナル2022」を開催しました。